麗江ナシ(納西)族自治県は、中国雲南省の西北部、チベット高原の東南端に位 置します。省都昆明から約600キロ、高速バスで9時間の旅です。飛行機と車を使えば、2時間で到着します。 麗江を象徴する玉龍雪山を望む平地では、水稲、とうもろこし、小麦、そらまめ、大豆などが主に栽培されています。他に換金作物としての綿花、麻、油菜、唐辛子も作られています。雪山に近付くにつれて、耕作地には適さない土地になり、牛、山羊などの放牧が細々と行われています。 住民の57パーセント、約17万人がナシ(納西)族で、その他、漢、ぺー、リス、イ、プミ族などが住んでいます。 ナシ族の祖先は古代中国の西北部に住んでいた遊牧民羌族で、その中の一派が南遷し、やがて現在の麗江に住むようになったと考えられています。 |
トンパ研究所に保管されている古いトンパ経典(象形文字経書) |
|
ナシ族は千年あまり前、表意象形文字を作り出しました。この象形文字で、民間故事伝説、宗教経典などを著しました。とくに、この文字は、トンパ(東巴)教の経典を書写 するのに用いたところから「東巴文(トンパ文字)」と呼ばれます。ナシ語では「ソチォ・ルチォ」(樹の記録・石の記録)と呼び、千数百種類(1200〜1300とも言われる)の文字があります。 トンパ(東巴)教は、ナシ族の原始宗教で、太陽、月、星、山、水、風、火などの自然物を崇拝し、万物に霊魂がやどると信じられていました。
唐の時代から、ナシ族とチベット高原の吐蕃とは頻繁に接触があり、トンパ教は、チベットのボン教の影響、および仏教、道教の影響も受けているといわれます。冠婚葬祭や、病気の時や、邪気払いの時は、トンパを呼んで儀式を行ってもらっていました。トンパは、宗教儀式を司る祭司のことで「智者」を意味します。しかしこの宗教も、1950年代からだんだん廃れていきました。 |
すべての著作権は青柳健二に帰属します。 Copyright 2004-2009 Aoyagi Kenji & asia photo net. All rights reserved.
|